『月極駐車場』vs『月決駐車場』どっちが正解!?

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街中でよく見かける「月極駐車場」の看板ですが、皆さんは正しく読めるでしょうか?「げっきょくちゅうしゃじょう?」「つききわめ?」「どういう意味?」となっていませんか?いまさら聞けない漢字の読み方、しっかり確認しておいてください。

この記事では、読み方はもちろん、何故「月極駐車場」と表記するのかを歴史を紐解いて説明しています。

「月極駐車場」何と読む?

この漢字は意外と正しい読み方を知らない方が多く、本当に「げっきょくちゅうしゃじょう」が正しい読み方と思ったまま大人になられた方もいらっしゃるようです。お客様に聞いた話でも、「げっきょくの契約をしたいのですが・・・」「お宅のげっきょく駐車場に空きはありますか?」と電話がかかってくることもあるようです。

正しくは「つきぎめ ちゅうしゃじょう」と読みます。

「え?つきぎめ?」と正しい読み方が分かってますます頭の上のクエスチョンが増えた方もいらっしゃるのではないでしょうか?月で決めているなら、「月決め」じゃない?と思いますよね。どうして月を極める必要があるのでしょうか?

“月極”の歴史

私たちが学校で習った意味合いに近いのは、こちら「月決め」ですよね。「月極」と書く方が不思議ですよね。この問題を解き明かすには、江戸時代まで遡(さかのぼ)る必要があります。江戸時代、「決」と言う字、もともとは「極」と書いていたのです

●古文書用語辞典  新人物往来社 より

【きま、きむ(究、極)】
①きむ(動詞)、決定する。
②きめ(名詞)、話し合ってきめること。約定。決定。

●古文書用字用語大辞典 柏書房 より

【きめ 極】
決・究とも書き、取極(取次・取究)と同じ。

●江戸語大辞典 講談社 より

【つきぎわめ(月極)】
月契約。月ぎめ。
文化8年・浮世床 序「月究(つきぎはめ)に留め置く」(髪結)

ご覧のように「極」は「契約する」、「皆で決める」、という今の漢字でいうところの「決」の意味合いが強く使われていたようです。昔から「月極」という言葉は、現在と同じ意味で使われていたというのは驚きです。

「月極」「月決め」の分岐点

戦前には、極(き)める=約束という意味が強くなります。この頃、金額を決(極)めて毎月支払いをするという形式の駐車場が誕生し、「月極駐車場」という文字が使われるようになります。この時点では、自然な流れですね、何の問題もないです。

当用漢字の出現

ところが、戦後になると、日本から漢字を撤廃するという流れが起こります。ただ、すべての漢字を急に失くしてしまうのは支障が出る可能性もあるということで、今まで使っていた難しい字体をやめて簡単なものにしたりしながら、使用しても良い漢字が1850個選出されました。それが昭和21年に内閣が告示した「当用漢字」と言われるものです。その当用漢字では、 

決=きめる

極=きわめる

と役割が分かれてしまいました。ここが運命の分かれ道になったようですね。きめるという役割は「決」になってしまいました。ですが、もともと使われていたこともあり、「月極駐車場」という言葉は残り続け、今もなお、その表記を続けているという事なのですね。 他にも、相撲の決まり手の一つ、極め出し(きめだし)など、残っているものもあるようです。

その後、漢字には約1600年という長い歴史がありましたから、漢字を撤廃することは難しいと判断が下され、昭和56年には1850個の当用漢字に100程足された「常用漢字」が決められました。

 現在の「常用漢字表」では、「きめる」には「決」の字だけが掲げられています。約束するという意味で使われていた「極」ですが、「きめる」の訓読みはありません。「規則を決める・態度を決める」といった、決定する意味で用いられるのは「決」が普通になりました。

以上のことを踏まえると、意味合い的には、毎月の約束ごとなので、「極」の方がしっくりきますが、毎月の決まり事と解釈すれば「月決」でも良いので、どちらが正しいということはないように思います。「月極」でも「月決」でも間違いはなさそうですね。両方正解ですね。

地域でも異なる表記

昔からの名残が強く、全国的にみると「月極駐車場」の表記が圧倒的に多いのですが、「月決駐車場」の表記をされているところも、もちろんございます。しかも、地域によって大きく差があり、分布は偏っています。

北海道、青森県、秋田県、高知県に「月決駐車場」の看板は多く見られます。青森、高知県に至っては50%を超える割合のようです( 2022.02.28「変わりゆく日本語の事態調査」より)。2件に1件は「月決駐車場」ということですよね。何故ここだけ「月決」の表記が多いのかは調べてみたのですがわかりませんでした。不明です。ご存知の方がいらっしゃれば、是非ご連絡ください。しかし、不思議ですね。

こうやって看板の写真を見ると常用漢字を習ってきた私たちは「月決め駐車場」の方が自然に読めますよね。私も小学生の頃は何て読むんだろう?月極さんがやっている駐車場なのかな?と思っていました。あなたがお住まいの地域の月極駐車場看板は「月極」なのか「月決」なのか注目してみるのも面白いですよ。

まとめ:月極駐車場 vs 月決駐車場

歴史が起こした奇妙な話ですが、同じ月契約の駐車場でも「月極駐車場」と「月決駐車場」と表記が2通りあることは面白いですね。表記が違えど、指しているものは同じものです。おそらく他にもこういった同じものだけど漢字表記が異なるものがあるのでしょうね。

旅行等で他県へ行った時の楽しみの一つとして、自分の住んでいる地域との間違い探しは面白そうですね。新たな発見があるかもしれません。何か見つかれば是非ご連絡ください。まずは、「月決駐車場」を探してみてくださいね!

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この記事を書いた人
辻本 光宏

カラーコーディネータ1級
駐車場看板のデザインをしてかれこれ13年が経ちます。駐車場看板のデザインの事なら何でも聞いてください。どうすれば目立つのか、どうすれば読みやすいのか、カラーコーディネーター1級の知識を生かしてご提案します。

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